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アルバム『江威子抄』は僕らの宝物

文:鈴木啓之

2024.12.19

声優界のレジェンドがまた一人旅立ってしまった。昭和に育ったテレビっ子ならば増山江威子の名前を知らない者などいないはずだ。お馴染み『ルパン三世』の峰不二子をはじめ、『天才バカボン』の優しいけれど時に恐いママ、「キューティーハニー」のセクシーな如月ハニーなどなど、可愛くて艶っぽい、しかも気品に溢れた魅惑的な声はずっと憧れの的だった。

そんな増山が1980年に発表したファースト・アルバム『江威子抄』が44年ぶりに初CD化され、同時に配信もスタートされた。それぞれのキャラクターに扮して歌われたアニメ主題歌、ミュージカル風味の歌とナレーションで構成されたバラエティーアルバムには、稀代の声優・増山江威子の魅力が存分に詰まっている。宇野誠一郎、渡辺岳夫、大野雄二ら、作家陣の名だたる顔ぶれにも注目して欲しい。

アルバム冒頭を飾るのは「キャンティのうた」。テレビアニメ『アンデルセン物語』で増山が声を演じた魔法の妖精 キャンティの歌でエンディングテーマに使われた。キャンティの相棒・ズッコの声は山田康雄であり、二人が『ルパン三世』以前に共演した作品ということになる。

「夜霧のハニー」はその後も続編が数多く作られている人気作品『キューティーハニー』より。アニメのエンディングテーマの中でも屈指の傑作として名高い。オリジナルの前川陽子版も出色なのだが、ここでは主人公の如月ハニーを演じた増山自身が歌っていることに落涙させられてしまう。

そして『ルパン三世』から、「ラヴ・スコール<峰不二子のテーマ>」。サンドラ・ホーンのオリジナルを不二子役の増山が歌う、やはり本家帰りのカバーだ。その後、野宮真貴や中納良恵らもカバーしている人気曲である。

「星のオンディーヌ」は、増山が所属していた青二プロダクションのシンフォニック・ドラマとして上演され、その後、”アニメリア・ファンタジカ”と称するイメージアルバムも出された作品のテーマ曲。ひとりミュージカル「私は或る女」と共に、歌とナレーションを堪能出来る。

再びアニソンに戻り、「エッちゃん」は石ノ森章太郎原作『さるとびエッちゃん』のオープニングテーマ。増山は歌のみで声優としては参加していなかったが、音楽を担当した宇野誠一郎との相性は抜群で、『一休さん』の挿入歌だった「てるてる坊主の歌」も宇野の作曲である。同作で増山は伊予の局(母上さま)とナレーションを担当していた。

アルバムは声優仲間の井上真樹夫が作詞したオリジナル曲「迷い道」で締めくくられる。増山とは所属事務所が一緒だった井上は『ルパン三世』の石川五ェ門の声優として共演もしていた近しい間柄であった。結局その後、個人名義によるアルバムを吹き込む機会はなく、これが最初で最後の貴重なアルバムとなった。

宇野誠一郎夫人で女優の先輩にあたる里見京子や野沢雅子ら、古い友人や知人たちからは”トンチ”と呼ばれて親しまれていた増山。それは本名の”知子”に由来し、姉三人の呼び名に準じたものだったらしい。クールな不二子やハニーとは違うイメージの愛らしいニックネームに増山の素顔が垣間見られて心が和む。

近年では、皆に知られている若いキャラクターのイメージを壊したくないという理由で顔出しによる出演は拒んでいたそうで、プロとしての矜持が窺える。天からの授かりものともいうべき素敵な声にさらに磨きをかけ、夢みる世界へと誘ってくれた増山江威子。今も僕らの耳にはっきりと残っているあの声はこれからも決して忘れることはない。唯一無二のこのアルバムこそ最高の宝物である。

鈴木啓之(アーカイヴァー)


<Release Information>

数々の人気アニメの声優をつとめた増山江威子の貴重なファースト・アルバムが初CDとなって44年ぶり復刻発売&DL/サブスク配信開始!
縁ある声優の野沢雅子・平野文・沢城みゆき からコメントも到着!試聴トレーラーも公開!


タイトル:江威子抄 増山江威子ファースト・アルバム【復刻盤】
アーティスト:増山江威子
リリース日:2024年12月11日(水)
▼作品ページ▼
https://soundfuji.kingrecords.co.jp/release/4676/

試聴トレーラーも公開中!

★メーカー購入特典
・ポストカード
1980年のLP発売当時、特典としてプレゼントされていたB2ポスターの復刻デザイン
▼詳細はこちら
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t15781/
※特典はなくなり次第終了

アニメ『ルパン三世』の峰不二子、『天才バカボン』のママ、『キューティーハニー』の如月ハニー、『パーマン』のパー子など、数々の人気アニメの声優をつとめ、今年5月に惜しまれながらもこの世を去った増山江威子の1980年に録音されLPでリリースされた『江威子抄 増山江威子ファースト・アルバム』が待望の初CDとして44年ぶりに本日12月11日(水)に復刻発売され、配信開始となった。

アルバムには全8トラックが収録されており、貴重な音源の数々が再び楽しめる。「キャンティのうた」(アニメ「アンデルセン物語」ED主題歌)・「夜霧のハニー」・「ラヴ・スコール」などといった名作アニメを彩る楽曲に加えて、ひとりミュージカル「私は或る女」や「星のオンディーヌ」では歌とナレーションも収録。「迷い道」ではアニメ「ルパン三世」石川五ェ門 役としても知られる井上真樹夫が作詞をつとめている。ブックレットには、増山江威子が当時記したメッセージもそのまま復刻となる。

「想い出なんて、それこそ忘却の彼方に消えて行くのがふつうですが、それが形になって残るという幸福を感じながら、この中の新しい歌もおしゃべりも聞く人の心に残るものであってほしいなァ、などと願っています。」
増山江威子
(『江威子抄 増山江威子ファースト・アルバム』ブックレットより抜粋)

 

44年ぶりの復刻発売に際して、増山江威子に縁ある声優からコメントも到着。


●野沢雅子 コメント

歌が上手かったトンチ。増山さんとは若い時から「トンチ」「マコ」と呼び合ってご自宅にもよく遊びに行っていたわね。。そんなトンチの昔のLPが今回CD化されることを本当に嬉しく思っています。残念ながらトンチの新曲を聴くことはもう出来なくなってしまったけれど、この復刻されるCDは私にとって貴重で大切。ぜひひとりでも多くの人に聴いてもらえますようにと心から願っています。

野沢雅子

 

●平野文 コメント

なんといっても私にとっての増山江威子さんは「ルパン三世」の峰不二子です。実に品位のある色っぽさ。唯一無二です。「ルパン」で初めてご一緒させていただいたときの、生声を直接耳にした私をご想像ください。身体が震えました。普段の増山さんも、立ち居振る舞いにはほんとに品位がおありでしかもキュート!そうした増山さんのお声をCDで拝聴できるなんて。これ以上の「耳福」はありません!幸せすぎます♡

平野文

 

●沢城みゆき コメント

2011年から、峰不二子の声をやらせていただいています、沢城みゆきです。バトンタッチの際、増山さんの関わられたものはありったけかき集めて見た/聞いた、遠い記憶。その中のひとつに今回のアルバムの曲がありました。それが復刻されるだなんて!とろけちゃう、体験ができる一枚。可愛いも色っぽいも遥かに超えて相手を”陥落”させる、これはもはや声を超えた何か、です。

沢城みゆき


今も色あせない増山江威子の声が詰まった貴重な音源を是非この機会に聞いてみてほしい。

ARTIST

  • 増山江威子

    EIKO MASUYAMA

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