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【ベルウッド・レコード50周年】 PICK UP LIBRARY 第7回

ベルウッド・レコード設立50周年を記念して1970年代の貴重なライブ音源がダウンロード/サブスクリプションにて配信開始!
ベルウッド・レコード往年のファンはもちろん、配信で初めて耳にする方にもまずはこれを聴いて欲しい、必聴タイトルをピックアップしてキングレコードスタッフがご紹介していきます。

SOUND FUJI 編集部

2022.11.4

▶「自然と音楽の48時間<’70全日本フォークジャンボリー実況録音盤>」

全日本フォークジャンボリーは、1969年から1971年にかけて岐阜県恵那郡坂下町(現:中津川市)にある椛の湖畔にて、毎年8月に開催された屋外フォークイベントである。中津川労音が開催したことから、「中津川フォークジャンボリー」とも呼ばれている。

本作は、2回目の開催となった1970年の全日本フォークジャンボリーの模様が収められた実況録音盤(キングレコード NEWSレーベルより発売)である。1969年は第1回ということもありイベント自体の知名度がそれほど高くなかったが、第2回が開催されることに関しては全国のフォークファンが関心を寄せていた。後のベルウッド・レコード設立者・三浦光紀は、このイベントのことを六文銭のマネジメントをしていた牧村憲一から聞き、当時関心を持っていたアーティストが多く出演することから、このステージを録音することを決意。他社が録音をするつもりだったところを説得し、キングレコードの録音機材を持ち出してステージの音源は全て三浦によって録音された。

第2回では「アマチュア・フォーク発表会」と題して、開演までの時間をアマチュアに解放し、1組1曲飛び入りで披露した。その中から、東京から参加したなぎらけんいち(なぎら健壱)や京都の3人組女性フォーク・グループ バラーズらの演奏が収録された。なぎらけんいちは、後にビクターからデビューし今年でデビュー50周年を迎える、言わずとしれたフォークレジェンドの1人だ。本作に収録された「怪盗ゴールデンバット」は、デビュー前の貴重な音源である。対するバラーズは、1968年から活動を開始し、ギターと3声コーラスのアンサンブルが美しい「海の風」を歌ったこのステージを最後に解散した。

ライブ本編では、岡林信康、遠藤賢司、五つの赤い風船など、当時フォーク・シーンの第一線で活躍していたミュージシャンの圧倒的なパフォーマンスと、それに対する観客の熱狂ぶりが鮮明に記録されている。

この第2回全日本フォークジャンボリーを通じて、三浦が衝撃を受けたアーティストが、ソロのステージに加えて岩井宏・加川良とのトリオでも演奏した高田渡と、「春よ来い」の演奏や岡林信康のバックで異彩を放ったはっぴいえんどであった。ここでの出会いが、高田渡の「ごあいさつ」へと繋がり、ベルウッド・レコードにおける はっぴいえんどやキャラメル・ママの活躍へと発展していく。

三浦がこの2組のアーティストに出会ったことは、本コラム第1回で紹介した「フォーク・ギターの世界」での小室等との出会いに匹敵する、ベルウッド・レコード設立へと繋がるターニングポイントの1つと言えるだろう。

〇オリジナルリリース:KR-7018/9(1970年リリース)


<参加ミュージシャン>
なぎらけんいち、バラーズ、ひがしのひとし、アテンションプリーズ、高田渡、岩井宏、加川良、のこいのこ、田楽座、遠藤賢司、五つの赤い風船、チェコスロバキア・スルク大舞踊合唱団、村岡実とニュー・ディメンション・グループ、遠藤賢司、藤原豊、斉藤哲夫、小室等と六文銭、はっぴいえんど、岡林信康

▶「春一番コンサート・ライブ!」

本作は、1972年に大阪天王寺野外音楽堂にて開催された第2回春一番コンサートの模様が収録された実況録音盤である。

記録映画「ウッドストック 愛と平和の3日間」に感化された音楽プロデューサーの福岡風太は、1970年に開催した「BE-IN LOVE ROCK」を皮切りに、関西にて数々の野外コンサートを企画・開催した。福岡がその経験をもとに、関東と関西それぞれで活躍するアーティストを集結させ、フォーク・ロックなどジャンルの垣根を超えて共演するビッグイベントとして1971年から1979年まで開催したのが、この「春一番コンサート(以後、「春一番」)」である。

本作に収められた1972年の春一番は、この年だからこそ実現した出演者のラインナップにもぜひ注目してもらいたい。「とめ子ちゃん」を演奏するごまのはえは、翌年にはココナツ・バンクへと発展。武蔵野タンポポ団も1972年末に解散になってしまい、小坂忠とフォージョ(ー)ハーフも発売されている音源はこの年のライブ音源のみだ。当時のバンドはメンバーの移り変わりが多かったり、一時期だけバンドの形で活動していたというケースもあるのだが、このステージは奇跡の共演と言っても過言ではなく、彼らの演奏が収録された本作は資料的にも大きな役割を担っている。

さらに、いとうたかおが歌う「かたつむり」、中川五郎が歌うニッティ・グリッティ・ダート・バンドのカバー「ミスター・ポー・ジャングル」、あがた森魚+蜂蜜ぱいの「冬のサナトリウム」、高田渡の「系図」など、その年にリリースされたシングルやアルバムに収録された楽曲の数々が演奏され、1972年の音楽シーンを窺い知ることのできる1枚とも言える。遠藤賢司も同様に、同年リリースした「カレーライス」「満足できるかな」を披露し、ザ・タイガースの「シーサイド・バウンド」を織り交ぜるなどライブならではの圧巻のパフォーマンスで魅せている。

1枚を通して聴き終える頃には、アンコールで披露された武蔵野タンポポ団「カーカー」演奏後の観客と同様に、歓声と拍手を送りたくなってしまう程の充実した内容となっている。

〇オリジナルリリース:OFW-1/2(1972年リリース)

<参加ミュージシャン>
いとうたかお、田中研二、シバ、中川五郎、遠藤賢司、あがた森魚+蜂蜜ぱい、蜂蜜ぱい、小坂忠とホージョハーフ、ザ・ディランⅡ、友部正人、ごまのはえ、高田渡、武蔵野タンポポ団

◆再生はこちら
https://king-records.lnk.to/HaruichiLIVE

▶「1974 HOBO’S CONCERTS I ~見えないボールを投げる~」

1974年1月から毎月1週間ずつ、池袋シアター・グリーンという小劇場にて1年にわたって行われたライブイベント「ホーボーズコンサート」。本作は、その音源の中から、高田渡の4曲、中川五郎の2曲、なぎら健壱の3曲の演奏を収録した実況録音盤である。

1974年になると、日本における「フォーク」というのは、本作に収録されている3人の様なアングラ・フォークや関西フォークといったシーンから出たフォーク・シンガーというよりも、フォーク・デュオやフォーク・グループがブームの中心となっていた。フォーク・ソングが表現するものも、民衆の代弁やメッセージのような内容から、恋愛や暮らしなどを題材として人々の共感を誘うようなものへと変わっていった。

そんな時代における、前者のフォーク・シンガーの姿が映し出されているのが本作ではないだろうか。高田渡は、トーキング・ブルースである「質屋のブルース~夜汽車にのって」では観客の笑いを誘い、結成したばかりの大江田信・佐久間順平による「林亭」をバックに従えた編成で、林ヒロシと「魚つりブルース」を披露。中川五郎が披露した2曲、高田渡を歌詞に登場させたユーモア溢れる「飛行機事故で死にたくない」、古本屋で見つけた詩に曲を付けた「トカゲ」からは、詩からヒントを得て曲を作るといった曲作りのスタイルが伺える。なぎら健壱は、MCの「フォーク・ソングだけは、虚像であったら淋しいなという気がします」という言葉に表れている様に、フォーク・シンガーの本質というものを体現しているようだ。

移り変わる時代の中での変化や葛藤が顕著に表われ、その後も活動を続けていく彼らの作品を聴いていく上では橋渡しとなるような1作だ。

〇オリジナルリリース:OFM-12(1976年リリース)

<参加ミュージシャン>
高田渡、大江田信、林ヒロシ、佐久間順平、いとうたかお、中川五郎、なぎらけんいち、村瀬雅美、隅田朋之

◆再生はこちら
https://king-records.lnk.to/HOBOs_1

▶「1974 HOBO’S CONCERTS V ~ありがとう ありがとう ありがとう~」

本作のアーティストや曲目に目を向けると、はっぴいえんどの解散コンサート「CITY-Last Time Around-」に通ずる内容であることがわかる。

南佳孝は上述のコンサートに出演していた一人であるが、松本隆と共に制作したアルバム「摩天楼ヒロイン」を発表していた時期の演奏であり、表現力に富んだ味わい深いピアノの弾き語りを披露している。布谷文夫もこの時期に大瀧詠一プロデュースによる「悲しき夏バテ」というアルバムを発表しており、ココナツ・バンクをバックに従えてファンクなナンバーを歌い上げている。葡萄畑というバンドをバッグに名曲「機関車」等を披露した小坂忠、デビュー前であったセンチメンタル・シティ・ロマンスは、両者共に後年、細野晴臣プロデュースでアルバム作品を発表することとなる。本作の最後を飾るのは、細野によるギターの弾き語りで、「HOSONO HOUSE」収録の2曲と小坂忠への提供曲「ありがとう」のセルフカバーを収録。フォーキーなサウンドでありながらも細野のフィーリングによって、聴き心地の良い洒落たサウンドに仕上がっている。

細野の演奏以外に他のはっぴいえんどメンバーの音源が収録されているわけではないが、解散コンサートと同様に、解散後のメンバーの功績とその影響を受けたアーティストによる名演が集約された1枚となっており、隠れたはっぴいえんど関連作品としても楽しんでもらえるであろう貴重なライブ音源だ。

〇オリジナルリリース:OFM-16(1976年リリース)

<参加ミュージシャン>
南佳孝
布谷文夫、ココナツ・バンク(伊藤銀次、藤本雄二、矢野誠、上原裕)小坂忠、葡萄畑(本間芳伸、青木和義、佐々木周、佐考康夫、武末充敏)、センチメンタル・シティ・ロマンス(告井延隆、中野督夫、加藤文敏、細井豊、田中毅)、細野晴臣

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https://king-records.lnk.to/HOBOs_5

▶「春一番’79 Vol.1」

「最後の春一番」と銘打ち、4日間に渡って開催された1979年の模様が収録された1枚。
「春一番’79 Vol.2」(SKD-1047)も同日発売となり、2枚の実況録音盤で残された音源が今回配信開始となった。

大塚まさじ&Tour Bandによるボブ・ディランのカバー「男らしいってわかるかい」を1曲目に収録。この曲は、ザ・ディランⅡのデビューシングルで、第1回春一番コンサートの年にリリースされたという意味でも1曲目に相応しい楽曲だ。続く中川イサト「ローリング・メニュー」から佐久間順平&Barrel House Revueの「声」までは”旅”をテーマに、有山淳司の「Baby お前が好きだよ」から中川五郎とトカゲ・バンド「いつも戸口までだったね」までは”恋愛”をテーマにまとめられているように見受けられる。ただの記録盤ではなく、録音された音源がひとつの音楽作品としてまとめられている。

このVol.1の最後を飾るのは、中川五郎とトカゲ・バンドによるピート・シーガーのカバー「腰まで泥まみれ」。この曲は中川のデビュー作となった「六文銭/中川五郎」の最後に収録された曲でもあり、長期にわたって開催されてきた春一番のステージで10年前のフォーク・ソングを歌うことで、当時の観客もきっと感慨深い気持ちにさせられたことだろう。

1971年以降、会場に足を運んだ観客や、レコードで音源を聴く全国のリスナーに多くの音楽を届け、フォーク・ロックシーンを盛り上げたこの一大イベントは、1970年代の終りと共に一度幕を下ろすこととなった。この度、各音楽配信サイトで配信開始になった1972年から1979年のライブ音源を通じて、この歴史的な春一番というビッグイベントを是非堪能していただきたい。

〇オリジナルリリース:SKD-1046(1976年リリース)

<参加ミュージシャン>
大塚まさじ&Tour Band(山崎元治、木村克也、渡辺悟、三浦東洋士、島田和夫)、中川イサト、廖学誠、松田幸一
加川良、村上律
佐久間順平&Barrel House Revue(小松崎政雄、大庭昌浩、三谷ミツオ、白井幹夫)、有山淳司、中西康晴
友部正人、チャールズ清水
中川五郎とトカゲ・バンド(滝本季延、岡嶋BUN、西本明)

◆再生はこちら
https://king-records.lnk.to/Haruichiban_79_1


今回紹介したライブアルバムに演奏が収められているアーティストの多くが、現在でも精力的に活動を続けている。そして、11月11日に開催される「ベルウッド・レコード 50周年記念コンサート」では、レーベルにゆかりのあるアーティストたちが中野サンプラザホールに集結する。
ベルウッド・レコードというレーベルを冠した公演ではあるものの、出演陣を見れば、フォークキャンプ、フォークジャンボリー、春一番などのフォーク・ロックイベントの延長線上にある、歴史の1ページとなる出来事とも言えるだろう。
1970年代の実況録音盤には観客の歓声や写真も残されており、出演したアーティストと共に観客の姿もその歴史の一部として記録されている。
50周年記念コンサートではぜひ会場に足を運び、歴史的イベントの一旦を担う感覚を味わっていただきたい。


■ベルウッド・レコード 50周年記念コンサート
日程:2022年11月11日(金) 17:00開場 18:00開演
会場:東京・中野サンプラザホール

<出演者情報>
出演者:あがた森魚/伊藤銀次/いとうたかお/大塚まさじ/小室等/鈴木慶一×武川雅寛/鈴木茂/中川五郎/六文銭
スペシャルゲスト:佐野史郎/なぎら健壱/森山直太朗
Bellwood 50th BAND:高田漣(G), 坂田学(Drs), 伊賀航(B), 野村卓史(key), 武嶋聡(Sax, Cla)

[コンサート詳細・チケットはこちら]
http://bellwoodrecords.co.jp/50th/


【PICK UP LIBRARY】
第1回はこちら
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ARTIST

  • 高田渡

    WATARU TAKADA

  • 岩井宏

    HIROSHI IWAI

  • 加川良

    RYO KAGAWA

  • 遠藤賢司

    KENJI ENDO

  • 小室等

    HITOSHI KOMURO

  • 六文銭

    ROKUMONSEN

  • はっぴいえんど

    HAPPY END

  • いとうたかお

    TAKAO ITO

  • 中川五郎

    GORO NAKAGAWA

  • あがた森魚

    MORIO AGATA

  • ザ・ディランⅡ

    THE DYLAN Ⅱ

  • 南佳孝

    YOSHITAKA MINAMI

  • 細野晴臣

    HARUOMI HOSONO

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