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アルバム『ピラニア軍団』が現代に伝える東映曲者役者たちの熱き魂
文:真鍋新一
2024.9.4
「1977年にリリースされたピラニア軍団のアルバムがCDとレコードで復刻される。」そう聞いただけで思わず胸がときめいてしまうような類の人間は、ここから先を読む必要はない。このアルバムは『仁義なき戦い』(1973年)をはじめとする、あの東映作品の数々と地続きの世界が展開されている。
再生ボタンを押して目を閉じてみれば、日本映画界を大いに騒がせ、情け容赦ない暴力描写がてんこ盛りで、良識ある(?)映画ファンからは白い目で見られていた70年代の東映カラーを濃厚に感じることができるのだ。
あの時代の爆発的なエネルギーの源のひとつにピラニア軍団の奮闘があったことに、いまや誰も異論を挟む者はいないだろう。
70年代の東映映画やピラニア軍団について、本当になにも知らないという人に念のため説明をしておこう。少し前に『バイプレーヤーズ』というドラマが流行ったが、それよりもっと危険で血なまぐさく、そのうえ若くていつもギラギラしている集団、と言ったらいいだろうか。斬られ役に殺され役、モブに悪役。東映京都撮影所の片隅で、いつか主役を食うことを夢見る曲者たち。
軍団の中心メンバーたちが大暴れする傑作『狂った野獣』(1976年)を撮った中島貞夫監督いわく、ピラニア軍団は「はみ出し者の集い」で、そんな彼らが勢いに任せてアルバムを1枚作ってしまったのであった。
アルバムの冒頭を飾るのは、「その他大勢の仁義を抱いて」。この曲の歌い出しに彼らの魅力、置かれた環境が集約されている。
「スクリーンの端っコで俺らが刺されてる。」自分が刺される姿が大きなスクリーンに映し出されるのを客席から見つめている役者。なんて切ない光景だろう。彼らが刺されて死ぬのは「スクリーンの端っコ」であって中心ではない。ボンヤリしていると見逃してしまうほど一瞬の出番だ。なんて哀しくもおかしいのだろう。映画を観ていると途中で目につく、ちょっとどころではなくクセの強い顔。役名はない。「やけに印象に残る役者だなぁ」……そう思った次の瞬間、あっけなく蜂の巣にされてしまうその男。全身から血を噴き出させながらアスファルトに倒れ込んだ、あの眉毛のないチンピラにも人生がある。軍団のメンバーはいつもそんな「その他大勢」ばかりを演じてきた。
ほぼ全曲の詞曲を手がけ、中島監督と本作のプロデューサーを務めたのはフォークシンガー・三上寛。俳優として出演し、ピラニア軍団と共演した『実録外伝 大阪電撃作戦』(1976年)では松方弘樹に蹴飛ばされ、『沖縄やくざ戦争』(1976年)では自分が葬られるための穴をスコップで掘らされるなど、彼も東映作品では軍団同然の悲惨な目に遭っている。
映画を愛し、ピラニア軍団のメンバーと同じ目線で撮影所の人々を、役者、それも脇役・端役という境遇を見つめることができた。本作の楽曲は、そんな彼だからこそ書けたのだ。1曲1曲がメンバー主演のオムニバスのように始まっては終わり、映画の世界で浴びたことのないスポットライトが各メンバーに当たっていく。そんな情景を想像してしまったら、感涙にむせび泣かずにいられようか。
佐藤準とともにアレンジャーを務めたのは坂本龍一。YMO時代の華やかな”教授”の姿をイメージしてはいけない。無精ヒゲを生やし、そのむさ苦しいいでたちが水島新司の野球マンガ『あぶさん』(飲んだくれの代打専門バッター)に似ていたことから”アブ”と呼ばれていた頃の坂本龍一だ。
奇しくも坂本龍一の俳優としての代表作『戦場のメリークリスマス』(1983年)の序盤では三上寛が、終盤では室田日出男がデヴィッド・ボウイに理不尽な制裁を加える役で登場する。『ピラニア軍団』の作家とアレンジャーとシンガーがこんな形で再びあいまみえていたとは、後日談としては申し分ない。
「1977年にリリースされたピラニア軍団のアルバムがCDとレコードで復刻される。」
そう聞いただけで思わず胸がときめいてしまう類の人間たちが、もしもどこかで顔を合わせることがあったら、ピラニア軍団がスクリーンでどのように輝いていたか。そしてこのアルバムに彼らの姿が、いかに生き生きと記録されていたか。いつ、どんな時でも楽しく話ができるだろうと思う。
【Release Information】※9/11情報更新
『ピラニア軍団』
岩尾正隆/片桐竜次/川谷拓三/小林稔侍/志賀勝/志茂山高也/白井孝史/高月忠/司裕介/寺内文夫/成瀬正/根岸一正/野口貴史/広瀬義宣/松本泰郎/室田日出男
応援団 渡瀬恒彦/橘麻紀
プロデューサー 中島貞夫/三上寛
【曲目】
1.その他大勢の仁義を抱いて(歌唱:志茂山高也)
2.役者稼業(歌唱:志賀勝)
3.悪いと思っています(歌唱:松本泰郎)
4.俺(れーお)(歌唱:成瀬正)
5.死んだがナ(歌唱:根岸一正)
6.だよね(歌唱:川谷拓三)
7.ソレカラドシタイブシ
(歌唱:小林稔侍/白井孝史/寺内文夫/高月忠/広瀬義宣/片桐竜次 <冷かし>渡瀬恒彦)
8.はぐれピラニア(歌唱:岩尾正隆)
9.有難うございます(歌唱:室田日出男)
10.やめましょう(歌唱:司裕介)
11.菜の花ダモン(歌唱:橘麻紀)
12.村歌~わしゃ知らん節~(歌唱:ピラニア軍団)
13.関さん(歌唱:野口貴史)
■配信
配信サイトはこちらから(通常DL/ハイレゾDL/ストリーミング)
https://king-records.lnk.to/PiranhaGundan
●インストゥルメンタル音源を含む全26トラックを配信
■LP
商品番号:KIJS-90041
●数量限定プレス盤
●33回転/歌詞カード/プレゼント応募抽選券封入
定価4,400円(税抜価格4,000円)
■CD
商品番号:KICS-4161~20(CD2枚組)
CD1 LP収録と同内容(全13曲)
CD2 インストゥルメンタル音源を収録(初音源化)
●歌詞カード/初回製造分のみプレゼント応募抽選券封入
*プレゼント応募抽選券の施策はLPと共通内容です。連動施策ではございません。
定価4,400円(税抜価格4,000円)
【〈ピラニア軍団〉発売キャンペーン決定】
LP(KIJS 90041)、及びCD(KICS 4161~2)の初回製造分に封入される応募券を郵便ハガキに貼り、必要事項をご記入の上、ご応募ください。
特製〈ピラニア軍団〉トートバッグが50名様に当たります。
※応募詳細は、応募券が印刷された商品封入チラシをご確認ください。
【〈ピラニア軍団〉購入者特典決定】
■メーカー特典(アナログ盤、CD共通)
ジャケットステッカー(50㎜×50㎜)
※対象店舗は下記キングレコードHPをご参照ください。
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t15102/
■オリジナル特典
アナログ盤(KIJS-90041)ではオリ特も実施します!
・amazon.co.jp<メガジャケ>
・HMV(一部店舗除く)、HMV&BOOKS online<ポストカード>
・セブンネットショッピング<ミニスマホスタンドキーホルダー>
・タワーレコード<B2ポスター>
・Rakutenブックス<アクリルコースター(正方形90mm)>
オリ特つきでのご購入はこちらから:https://king-records.lnk.to/piranha
※各店舗特典は数に限りがございます、なくなり次第終了となりますのでお早目にご利用ください。
詳しくは下記サイトを御確認ください
https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t15102/
ピラニア軍団メンバー出演作の特集上映<ピラニアたちの唄(ブルース)>
開催日:9/19(木)~27(金)※9/23(月)を除く
場所:新文芸坐(東京・池袋)https://www.shin-bungeiza.com/
チケット販売:上映1週間前の0:00よりオンラインにて販売(窓口は9:00より販売)
■上映作品
暴走パニック 大激突(1976)
狂った野獣(1976)
河内のオッサンの唄(1976)
ピラニア軍団 ダボシャツの天(1977)
女獄門帖 引き裂かれた尼僧(1977)
■ミニライブ&トークショー
9/22(日)『ピラニア軍団 ダボシャツの天』上映後、ミニライブ&トークショーを開催
ミニライブ:三上寛
トークショー:三上寛、橘麻紀
■料金(2本目割)
<1本のみ>:一般1500円、各種割引1100円
<同日2本>:一般1900円、各種割引1500円
※9/22『ピラニア軍団 ダボシャツの天』は特別料金:一般2400円、各種割引2000円
※9/26・27『ピラニア軍団 ダボシャツの天』は「2本目割対象外」:一般1500円、各種割引1100円
▼詳細
https://www.shin-bungeiza.com/schedule#d2024-09-19-1
■糸川燿史「ピラニア軍団写真展」
同会場ロビーにて、会期中実施。ご来場者様はどなたでも御覧頂けます。