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“DJ吉沢dynamite.jp”全面監修、選盤、選曲によるKINGグルーヴ民謡名盤の配信化シリーズ「KING MINYO GROOVE INVASION」がスタート!第1弾として10作品がダウンロード/サブスク解禁!

SOUND FUJI 編集部

2025.9.24

『伝統と革新が共鳴する、民謡の新たなる地平』

現代日本の音楽シーンに一つの潮流が生まれている。それは「民謡」の再評価である。厳密にはDJ界隈をはじめ、コアな音楽ファンに人気の「洗練されたアレンジによる民謡」となるであろう。もとはと言えば私も、オーディオチェックや教材レコードのような廉価盤に収録されていたファンキーでジャジーな民謡グルーヴでそのカッコ良さを知り、探究するきっかけとなりました。と言うわけで、キングレコードと私による配信プロジェクト『KING MINYO GROOVE INVASION』(キングレコード 民謡グルーヴ 侵略)は、民謡または俗曲という古き良き伝統音楽の潜在能力を再定義する試みであります。本企画は、1950年代後半~70年代後半の当時の最先端のサウンド・プロダクション、民謡が持つプリミティヴなグルーヴ 、そして多種多様なジャンルのエッセンスを融合させることで、未知なる音楽体験を創出し、世代や国境を超えた多くのリスナーに受け継がれることを意図としております。

まず特筆すべきは、企画の根幹をなす「民謡の解体と再構築」というコンセプトである。民謡は、太鼓や手拍子といったシンプルなリズムに乗って歌われることが多く、その土地固有の風土や人々の生活、感情を色濃く反映した、いわば ”音の風景画”である。しかし、1950年代~70年代当時の社会においても、その魅力は時に古色蒼然としたものとして捉えられがちであったと推測される。ここでセレクトさせて頂いた楽曲群は、この伝統的な骨格を尊重しつつも、大胆なアレンジを施すことで、その奥底に眠るグルーヴと普遍的なメロディを顕在化させている。例えば、ソーラン節の力強い節回しがジャズ、ラテン、ロック、時に重厚なビートやファンキーでタイトなベースラインと絡み合うことで、原始的なエネルギーがより一層増幅され、身体を揺さぶるダンス・ミュージックへと昇華される。これは、伝統音楽が持つ「踊り」という根源的な要素を当時の現代的なアレンジで再解釈した結果であり、老若男女を問わず本能的に楽しめる音楽を創り出すことに成功したと言えよう。

次に、本企画でセレクトされたアーティストたちの多岐にわたる顔ぶれも実に興味深い。ジャズやオーケストラ界隈のアレンジャーから、昭和歌謡やポップス界隈で人気の歌手やグループ、メンフィス出身の黒人のファンク・バンドに至るまで、正調な民謡界隈の人らとは異なるフィールドで活躍する才能が集結したことで、民謡という共通の素材から多種多様な音楽的アプローチが生まれた。それぞれのアーティストが、自身の音楽的ルーツや哲学を民謡に持ち込むことで、誰も聴いたことのない新しいサウンドが誕生したのだ。例えば、伝統的な楽曲に浮遊感のあるシンセサイザーが重なることで、スペーシーであったり幻想的な世界観が構築されたり、三味線の鋭い音色をロックギターで表現し、ダイナミックでアグレッシブな楽曲が生まれたりと、ジャンルの垣根を超えた化学反応が起こっていた。これは、音楽の多様性が尊重される現代においても、新しい価値観を生み出すための理想的なコラボレーション・モデルを提示したと言える。

さらに、本企画が持つ「文化的侵略(INVASION)」というネーミング。これは単に既存のリスナーに民謡を聴かせるだけでなく、民謡というジャンルに触れてこなかった若者たち、あるいは海外の音楽ファンにも積極的にアプローチしていきたい、という意思の表明であります。実際にYouTubeやSNS上では、身体で感じるグルーヴを持つ音楽に慣れ親しんでいる海外のユーザーからも「クールすぎる!」等といった称賛の声が寄せられていたり、日本の民謡が持つユニークなグルーヴや旋律が国境を超えて通用することが証明されています。これは、日本の伝統文化をグローバルに発信していく上での手がかりの一つとなるのではないでしょうか?

しかしながら、本企画の真価は単なる革新性だけでなく、民謡が持つ本質的な美しさを決して損なっていない点にあります。どんなに複雑なアレンジや先進的なサウンドが加わっても、根底には、民謡が持つ力強いコブシや、郷愁を誘う旋律、そして日本の風土に根ざした情緒が息づいている。これは、民謡という伝統芸能に対する深い敬意と理解があって初めて成し得ることであり、当時の制作に携わった全ての人々の民謡への愛が結晶化した結果と言えるであろう。

『KING MINYO GROOVE INVASION』は、民謡が過去の遺物ではなく、常に進化し続けている生きた芸術であること。そして、伝統と革新は決して相反するものではなく、互いに影響し合い共鳴し合うことで、より豊かな音楽的土壌を育むことができるという、日本民謡の新たなる視点や思考のきっかけをリスナーの皆さんに感じて頂けたらと思います。Minyo is still alive !
※一部、民謡楽曲を取り上げていない作品も含まれていますが、本企画との類似性や独創性を鑑みてセレクトされています。

2025年9月
DJ吉沢dynamite.jp


KING MINYO GROOVE INVASION_vol.1:

民謡と現代音楽の融合は決して新しい試みでは無く、1960年代から70年代にかけて日本のレコード会社やアーティストたちは民謡の持つ可能性を信じ大胆な実験を繰り返していました。

1963年、民謡界の巨匠である三橋美智也は『三味線リサイタル』で東京キューバン・ボーイズと共演し、三味線の音色とアフロキューバン・リズムを融合させるなど、半世紀以上も前に民謡とラテン音楽の相性の良さを見出していました。1968年には、東京少年少女合唱隊が『歌はリズムにのって』に収録された富山県民謡「こきりこ(節)」をドラムブレイク&コーラスを挟む美しいハーモニーでグルーヴィーに再構築。アルバム通したジャジーな編曲・合唱指導は藤家虹二が担当。

1970年代に入ると、この流れはさらに加速。歌謡曲のトップスターであるピンキーとキラーズ『ピンキラの民謡お国めぐり』は、ポップなアレンジで民謡を歌い若い世代に親しみやすさをアピール。編曲には、前田憲男や、”エレキの神様”こと寺内タケシが参加しており、彼らの手腕によってジャズやロックのエッセンスを取り入れたモダンなサウンドへと変貌を遂げました。

1971年の東京アカデミー混声合唱団による『日本のうたによるコーラス・ビッグ・デモンストレーション』は東京キューバンボーイズ の福井利雄によるハイクオリティなアレンジが目白押しな一枚で、特にジャズファンクなアレンジの「田原坂」はレアグルーヴ・シーンでも高く評価されています。また同年のキングオーケストラの『さあ 歌って 踊って~あなたも宴会通になれます~』は、「宴会ソング」として民謡や俗曲を再構築し民謡が持つ大衆性を引き出そうと試みており、なかでもドス黒いファンクネスの「どじょうすくい(安来節)」が聴きどころ。

そして70年代後半よりディスコ・ブームの影響が民謡にも及ぶこととなる。1978年から79年にかけて、アメリカはメンフィスのソウル/ファンク・グループ、Ebonee Webbが『ディスコお富さん』や『ディスコ花笠音頭』をリリース。特に後者は、海外アーティストが日本民謡を本格的なディスコ・サウンドでカヴァーするという衝撃的な内容であり、片言の日本語歌唱が逆にグルーヴに溶け込み良い味を出している”使える”曲多数の和モノ人気盤である。共に編曲はファンキー・マエストロ、上田力によるもの。

時を同じくして1979年、三橋美智也がMITCHIE名義でプロデュースに寺内タケシを迎え、”サタデーナイト・フィーバー”風なジャケットで自身のヒット曲をディスコ・アレンジしたシングル「The Tombi(=夕焼けトンビ)/Bye Bye Horse(=達者でな)」を発表した後、同年に立て続けにアルバムを2枚リリース。『激れ! ミッチー ~三橋美智也もう一つの世界~』では、高田弘と近田春夫がアレンジャーとして参加し、民謡・演歌の枠を越えたロックやニューウェーブ、ディスコに挑戦。発表当時は異端と見なされたが、後に和モノ・グルーヴとして再評価されている。続いて『盆踊りディスコ』は、再び寺内とのタッグで「ユカタを着て踊っている輪の中にディスコ好きのヤングが飛び込んできて一緒に踊れるものにしよう(ライナーより抜粋)」と、全国各地の民謡の定番をディスコ歌謡スタイルで再構築している。

DJ吉沢dynamite.jp


プレイリスト『KING MINYO GROOVE INVASION playlist vol.1 』
selected by DJ吉沢Dynamite.jp

プレイリストURL:http://lnk.to/kmgi_pl_1


KING MINYO GROOVE INVASION vol.1 配信作品リンク
https://bio.to/KMGI_vol.1


『KING MINYO GROOVE INVASION vol.1』LINE UP

三橋美智也/東京キューバンボーイズ『三味線リサイタル』(1963年)

1.津軽じょんがら節(青森県民謡)/2.佐渡おけさ(新潟県民謡)/3.おてもやん(熊本県民謡)/4.ひえつき節(宮崎県民謡)/5.阿波踊り(徳島県民謡)/6.相馬盆唄(福島県民謡)/7.ソーラン節(北海道民謡)/8.新タント節(秋田県民謡)/9.沖縄民謡メドレー(阿里屋ユンタ/谷茶前節/汀間とう)
配信リンク: http://lnk.to/mihashi_cuban_recital

東京少年合唱隊『歌はリズムにのって ぼくらのレパートリーからVol.4』(1968年)

1.こきりこ(富山県民謡)/2.この道/3.松島音頭/4.早春賦/5.あわて床屋/6.雪のふる町を/7.夏の思い出/8.箱根の山(箱根八里)/9.中国地方の子守唄/10.すかんぽの咲く頃/11.かごめ/12.浜千鳥
配信リンク:http://lnk.to/tokyogassho_utarythm_4

ピンキーとキラーズ『ピンキラの民謡お国めぐり』(1970年)

1.おてもやん(熊本県民謡)/2.安来節(島根県民謡)/3.佐渡おけさ(新潟県民謡)/4.ソーラン節(北海道民謡)/5.江戸子守唄(東京都民謡)/6.真室川音頭(山形県民謡)/7.デカンショ節(兵庫県民謡)/8.八木節(群馬県民謡)/9.五木の子守唄(熊本県民謡)/10.黒田節(福岡県民謡)/11.会津磐梯山(福島県民謡)/12.炭坑節(福岡県民謡)/13.木曽節(長野県民謡)/14.安里屋ユンタ(沖縄県民謡)
配信リンク:http://lnk.to/pinkira_minyo

東京アカデミー混声合唱団『日本のうたによるコーラス・ビッグ・デモンストレーション』(1971年)

1.越天楽/2.やっこさん/3.木やりくずし/4.あわおどり(徳島県民謡)/5.ソーラン節(北海道民謡)/6.木曽節(長野県民謡)/7.黒田節(福岡県民謡)/8.田原坂(熊本県民謡)/9.島原地方の子守唄/10.箱根八里/11.モズが枯木で/12.忘れな草をあなたに/13.心の窓に灯を/14.雪のふる町を
配信リンク:http://lnk.to/tacademy_chorus_bigdemo

キングオーケストラ, 尾田悟グループ・ウィズ ・ストリングス『さあ 歌って 踊って ~あなたも宴会通になれます~』(1971年)

1.お座敷小唄/2.奴さん/3.かっぽれ/4.野球ケン/5.八戸小唄 ~鶴さん亀さん~(青森県民謡)/6.ンドコ節/7.さのさ/8.どじょうすくい<安来節>(島根県民謡)/9.まつのき小唄/10.ステテコシャンシャン/11.新土佐節/12.阿波踊り/13.いい湯だな/14.ダンチョネ節
配信リンク:http://lnk.to/sautatteodotte_minyo

EBONEE WEBB『ディスコお富さん+1』(1978年)

1.ロコモーション/2.太陽のあたる場所/3.ストップ・ザ・ミュージック/4.ウシュカ・ダラ/5.悲しき雨音/6.ディスコ お富さん/7.ミスター・チョッパー・ベースマン/8.涙の口づけ/9.フジヤマ・ママ/10.ラスト・ダンスは私に/11.ディスコ・お富さん(カラ・オケ)
配信リンク:http://lnk.to/ebonee_discootomi

EBONEE WEBB『ディスコ花笠音頭 • 相馬盆唄  ―メンフィス・ディスコで日本民謡+1』(1979年)

1.相馬盆唄(福島県民謡)/2.ソーラン節(北海道民謡)/3.南部牛追唄(岩手県民謡)/4.安里屋ユンタ(沖縄県民謡)/5.花笠音頭(山形県民謡)/6.炭坑節(福岡県民謡)/7.佐渡おけさ(新潟県民謡)/8.阿波踊り(徳島県民謡)/9.炭坑節(バッキング・トラック)
配信リンク:http://lnk.to/ebonee_discohanagasa

MITCHIE『THE TOMBI/BYE BYE HORSE』(1979年)

1.THE TOMBI(夕焼とんび)/2.BYE BYE HORSE(達者でナ)
配信リンク:http://lnk.to/mitchie_tombi

MITCHIE『激! MITCHIE~三橋美智也もう一つの世界~』(1979年)

1.噂のディスコ・ボーイ/2.ディスコ天国/3.ヒミコふぃーばー/4.むーんさると和尚さん/5.ディスコじょんがらぶし/6.ミッチーと踊ろう/7.Go Go MITCHIE!/8.三味線ふぃーばー
配信リンク:http://lnk.to/geki_mitchie

MITCHIE『盆踊りディスコ』(1979年)

1.花笠音頭(山形県民謡)/2.常磐炭坑節(茨城県民謡)/3.おてもやん(熊本県民謡)/4.斉太郎節(宮城県民謡)/5.会津磐梯山(福島県民謡)/6.ソーラン節(北海道民謡)/7.鹿児島小原節(鹿児島県民謡)/8.炭坑節(福岡県民謡)/9.金毘羅船々(香川県民謡)/10.相馬盆唄(福島県民謡)
配信リンク:http://lnk.to/mitchie_bondisco

ARTIST

  • 三橋美智也

    MICHIYA MIHASHI

  • ピンキーとキラーズ

    PINKY & KILLERS

  • 東京アカデミー混声合唱団

    TOKYO ACADEMY MIXED CHOIR

  • キングオーケストラ

    KING ORCHESTRA

  • 尾田悟

    SATORU ODA

  • エボニー・ウェブ

    EBONEE WEBB

  • 東京少年少女合唱隊

    THE LITTLE SINGERS OF TOKYO

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