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黒木真由美 インタビュー【後編】
デビュー50周年を迎えた今年、これまでの全作品がサブスク解禁された(ギャルのメンバーだった中世古アキが在籍したキャンティの作品も併せて解禁)。新曲「想いのままに」も配信リリースされた3月25日、50年前のデビュー記念日にあたるその日にキングレコードで行われた、正に運命的なタイミングでのインタビューをお届けします。
進行・文:鈴木啓之 / 写真:Ryoma Shomura
2025.4.15
(前編からの続き)
――まだまだソロ活動が続いてもよかったであろう時期に3人組の「ギャル」が結成されたわけですが
黒木 そうですね。自分の気持ち以上に周りの方たちから「何でソロでやらないの?」っていうお声をたくさんいただきました。でもお話を聞いた時に「なんか面白そうだな」って思ったんです。ただ、衣装が短パンなんですよね。足を出すのがすごく嫌だったので、「どうしよう、痩せなきゃ」って思って、1ヶ月で5キロぐらい落としました。いろいろ気にする年頃。花も恥じらう年頃でしたから。ポパイに出てくるオリーブみたいな足が理想だったんですよ。お水もあんまり飲まないでいたら脱水症状でフラフラしちゃって、よくなかったですね。
――振り付けもしっかりつけられていましたね
黒木 日本テレビ音楽学院でレッスンしました。踊りはピンク・レディーさんの振り付けをされていた土居甫先生。それからボイストレーニングは大本恭敬先生でした。スタ誕出身の方たちはだいたいそうだったんじゃないですかね。3人組といえばキャンディーズさんが人気でしたけど、私たちは可愛い子ちゃんとはまたちょっと違う、いわばかっこいい路線でしたね。まあアイドルなので、少しは可愛さもあるみたいな。とにかくソロ時代とは全く違うので、これはなんか演出しなければと思ってお化粧をするようになったんです。それまで(ソロ時代)はすっぴんだったんですよ。だからどうやってお化粧したらいいんだろうと思って。当時はまだヘアメイクさんなどついていない時代でしたから。初めてつけまつげを付けた時は瞼が重たくて自分じゃないみたいでした。眉毛もキリッとさせたり。整形したんじゃないかっていう噂も出たくらいで(笑)。
――3人で一緒にってなった時に、目黒ひとみさん、石江理世さんとはどんなお話をされたんでしょうか
黒木 みんなスタ誕出身でそれまでも知ってましたので、特別な話はしなかったと思います。いってもみんなまだ16歳とか17歳の女の子でしたから、それはもう普通の女の子の会話ですよね。これからどういう風にやってこうみたいな話はしてなかったですね。そういうのは全部もう事務所さんの方針に従うみたいな。だから衣装も言われるがままだったんですよ。
――ギャルは3人のコーラスも決まっていてカッコよかったですね
黒木 大本先生にコーラスを作っていただいたんですけど、相当稽古したんですよ。歌もコーラスも難しかった。この間のライブで改めて歌ってみて、こんな高度なことをやってたんだって思いましたもん。当時は自分のパートしか入ってなかったので。今回違うパートも歌うようになった時に「あれ、このコーラスって普通じゃないな」って思いました。普通にハモってるわけじゃなくて、なんだかもう音が飛び交ってる感じなんですよ。2人だと不協和音なんだけど、3つ合わさるとちゃんとしたハーモニーになる。こんなハーモニーだったんだということを最近になって知りました。
――楽曲もスリー・ディグリーズみたいで躍動感に溢れてますね
黒木 完全にそうですよね。スリー・ディグリーズとかABBAとか洋楽を意識した作りだったと思います。記録されてないですけど、演奏されていた方々もすごいメンバーだったんじゃないですか? 「マグネット・ジョーに気をつけろ」は星屑スキャットの皆さんがカバーされてますよね。デビューする前からずっと歌って下さってて、あの方たちのデビュー曲になったって聞きました。
――3枚目のシングル「誘惑されて」は桑名正博さんの作で、カップリングでは「スーパースター」もカバーされていましたね
黒木 いただいたデモテープを聴いたら本当に桑名さんって言う感じでカッコよくて。その時のテープをとっておけばよかったのにもう無いんです。今だったらもう神棚に飾っておくぐらいの価値があるものだと判るんですけど。残念ながら当時はそういう意識がなかったんですよ。この時からメンバーが理世ちゃんから(中世古)アキちゃんに交替しましたね。そのあとの「黄金仮面」はラジオドラマの主題歌で特殊な曲だったと思うんですけど。 特殊と言えばアルバム(※『ギャルのスペース・オペラ』)では「スター・ウォーズ」とか「宇宙戦艦ヤマト」とかをカバーしていたりしてかなり変わったアルバムでしたよね。面白い内容なので今でも受けるような気がします。
――昨年のライブではギャルの曲も披露されて。本当にすべてが素晴らしかったんですが、ボイストレーニングとはされていたんですか?
黒木 ありがとうございます。ボイトレはライブの前に2か月ぐらいですけどやりました。歌手を辞めてからは曲を聴くことも歌うこともなくなっていたんですよね。クラシックは好きで、モーツァルトとか聴いてたりしたんですけど。だから本当に久しぶりにステージに立って、リハーサルでマイクを持った時は、緊張で全身ガタガタ震えて呼吸困難みたいになっちゃって。声が出ないんじゃないかって心配したんですけど。
――長い間封印されていた歌を再開されるには何かきっかけがあったのでしょうか
黒木 もう一度歌いたいって思いとかは全然なかったんです。興味がなくなってしまった感じがずっと続いてました。それがある日突然、なんでしょうかね、神様の啓示というか、もう一度歌いなさいって言われたような気がしたんですね。もしかすると一度歌を辞めた時に、もうちょっと歌いたいって気持ちが心の奥の奥の方にあったのかもしれない。だから「あ、これは自然な形で寄り添っていくのがいいかもしれない」って思って。もしかしたらそれが本当はとってもやりたかったことなんじゃないかなとか。そこに身を任せて行った感じなんです。
――そのおかげで我々もこうしてまた黒木さんの歌を聴けるわけで。昨年の「ピンクの薔薇」に続いて今年もまたオリジナルの新曲がデジタルリリースされましたね
黒木 今度の曲は「想いのままに」というんですが、本当はこの曲が一番最初に自分の中に聴こえてきたんです。メロディーが先に聴こえてくる時と、歌詞から来る時がありまして、両方が一緒に出来てくる時もある。だいたいがボーッとしてる時ですね。これは曲からでした。本当に自然に。ぼわーんとしてたら降ってきたって言う感じですかね。だから曲を聴きながらそれに詞を乗せていくっていうよりは、曲は曲であって、詞はなんか来てるなって思ったものを書いていって、両方を組合せてみたらちょうど合ってたっていう感じなんですよね。自分でも不思議なくらいぴったり合うんですよ。言葉では表現しづらいですけど、無のイメージになってる時にインスピレーションが湧いてくるみたいな。ちょっと変わってるかもしれませんが。
――アイドル活動されていた当時は、詞とか曲をご自分では書かれる機会はなかったですよね?
黒木 まったくなかったです。もう言われるがままに歌っていただけで。今回の流れは「このまま人生を終わらせていいのか?」っていう自問自答から始まったんですね。その時に歌っていうキーワードがふっと降りてきて、そこから自然と音が聴こえ、詞も浮かんで歌になった。すごく運命的なものを感じてます。これからは、あの頃の曲も含めてまた歌わせていただく場を持てたら嬉しいです。今年がアニバーサリーというのもありますし。
曲がたくさん出来ているのでアルバムも作りたいんですよね。それも自然の流れに沿っていければいいかなって。 歌を聴いていただいて、そこから癒しが生まれたり、頑張ろうっていう気持ちが湧いてきたりしたら良いなって思うんです。