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【Event Report】『交響詩 ウルトラマン/ウルトラセブン』リリース記念トーク&リスニングの夕べ

文:鈴木啓之

2026.4.2

1979年に発売されたアルバム『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』が昨年12月にSACDハイブリッド盤としてリリースされたのを記念してのトーク&リスニングイベントが、去る3月15日に秋葉原のオリオスペック・イベントスペースにて開催された。SOUND FUJIでの初イベントとなった『「伊福部昭SF特撮映画音楽の夕べ」実況録音盤』リリース記念のトーク&リスニングイベントに続く第2弾の企画となる。

左から松下氏、藤田氏、辻氏

 当時の担当ディレクターであった元・キングレコードの藤田純二氏、今回の担当ディレクターであるキングレコードの松下久昭氏、リマスターを手がけたキング関口台スタジオのエンジニアである辻裕行氏をゲストに迎え、オリオスペックの佐藤智将氏とキングレコードの中山良輝氏の司会の下で進行。アルバムの制作背景やリマスターに関するトークと音源試聴による濃密な時間であった。


前方でのMC。左から佐藤氏、中山氏

“『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』から始めるストリーミング・オーディオ入門”と題され、オーディオシステムやハイレゾ・ストリーミングプラットフォームQobuzの紹介などを中心に進行された第1部に続く第2部では、”『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』制作当時~最新リマスタリングの証言&試聴比較”のサブタイトルに基づき、ゲストによるアルバム制作当時のエピソードと最新リマスタリングの工程が深掘りされ、1979年のLP音源、2025年のリマスター音源をSACDハイブリッド盤に収録されたCDレイヤー、SACDレイヤーの音源、ハイレゾ音源(192kHz/24ビット)と新旧のフォーマット違いによる聴き比べも行われた。


今回のリマスタリングについて解説する辻氏


国内オーディオメーカーの機材による総額700万円超のシステムでの試聴

また、初公開となる2013年に撮影された冬木透氏の貴重なインタビュー映像も上映され、定員を上回る応募の中から抽選で当選したという熱心なオーディオファン、特撮ファンの眼と耳を終始釘付けにしていた。

冬木透氏のインタビュー上映


『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』は、円谷プロダクション制作による特撮テレビ作品『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の劇伴を、作曲者自らのオーケストラ・アレンジで壮大に再構築されたアルバム。小松一彦指揮による東京交響楽団の演奏で、1978年12月3日に福生市民会館にて録音された。

本作制作当時を振り返る藤田氏

藤田氏の回想によると、当時サントラ関連のアルバムでは異例のヒットとなった、コロムビアの『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』にインスパイアされて企画したそうだ。そのきっかけとなったのが1978年2月に発売されたアルバム『ウルトラマン大百科!』である。


発売を心待ちにする人々の期待を高めた『ウルトラマン大百科』予約受注時のハガキ

それまでにもウルトラシリーズの歌を集めたアルバムは各社から発売されていたが、同アルバムが画期的だったのは、従来のレコードがあくまでも視聴者層の子供たちを対象にしていたのに対し、そこにマニア目線も加わったシリーズの主題歌・挿入歌を集めたLPであったこと。当時こぞってLPを購入したのは、一旦は界隈を卒業したはずの中学生以上の年代が多かったはずで、だからこそのヒットアルバムと化した。

会場に展示された『ウルトラマン大百科』のLP

当時のシリーズ最新作『ウルトラマンレオ』の終了から約3年。それまでのブームとは少し異なる高めの年齢層が中心となる第3次怪獣ブームが到来していた。やはり大人を取り込んでのアニメブームとも連動する新たなムーブメント。藤田氏がウルトラシリーズの音楽の権利を有する音楽出版社 日音へ企画の相談に行った際に評論家の竹内博氏を紹介されたことがターニングポイントとなる。酒井敏夫のペンネームで『ウルトラマン大百科!』に”ウルトラシリーズ発達史”という文も寄せた竹内氏の監修で作られたシリーズ第2弾のアルバム『サウンド ウルトラマン!』では、オリジナルBGMやカラオケ、名場面も収録されたバラエティ溢れる構成にユーザーは胸を躍らせた。続けて第3弾となる『ウルトラ怪獣大百科!』、第4弾の『サウンド ウルトラマン パートⅡ』も出され、さらに『ウルトラオリジナルBGMシリーズ』へと展開されてゆく中で念願の新録による『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』が企画されたのだった。

会場には上述のLPも展示された

録音場所が福生市民会館となったのは、都区内のホールがスケジュールや予算の関係で使用が困難だったため、新しく出来たばかりで音の環境も良かった同ホールが選ばれた由。アナログで行われた録音はマルチチャンネルと2chの両方で収録され、スタジオでマルチチャンネルのマスターテープから2chにトラックダウンして完成されたという。そもそもがオーケストレーションを前提に作られた冬木による『ウルトラセブン』のクラシカルな音楽世界と、ジャズ畑の宮内による『ウルトラマン』のバンドサウンドっぽい音色、それぞれのカラーを活かしつつ、違和感なく融和させることがアルバム制作の最大のポイントであったそうだが、結果的に見事なトータルアルバムに仕上がっており、録音から半世紀近くとなる現在も決して色褪せていない。

当時の特撮関係の音盤は、映画作品ではゴジラシリーズをはじめとする東宝特撮作品の音楽を商品化していた東宝レコードが、そしてテレビ作品ではウルトラシリーズの作品集を連発していたキングレコードが完全にリードしていた。そのどちらにも関わっていた竹内氏の功績も大きい。


オリジナルマスターテープから最新技術によってリマスタリングされた音源が収録された今回のSACDハイブリッド化の企画経緯について、本企画の担当ディレクター松下氏によると、『ウルトラセブン』の音楽を担当した作曲家・冬木透の生誕90周年を、そしてウルトラシリーズの音楽の起点となった『ウルトラQ』『ウルトラマン』の音楽を担当した作曲家・宮内國郎の没後20年を記念した企画として持ち上がったのだという。しかし、2024年12月に冬木氏が亡くなったことで、結果的に2人の作曲家への追悼盤として実現する形となった。

『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』の形では、1987年、2007年に続き3度目のCD化にあたるSACD『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』は正に決定盤となる1枚といえるだろう。

1987年発売の初CD化の際のジャケット

アートワークに目を向けても、当時のLPを再現したCDは今回が初となる(写真右)


【商品情報】


商品詳細はこちら:https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKIGC-38/
『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』
発売日:2025年12月24日(水)
品番:KIGC-38(SACDハイブリッド)
定価:¥4,400(税抜価格¥4,000)

【収録曲】
交響詩「ウルトラマン」(作曲、編曲:宮内國郎)
01. ウルトラマンの歌
02. 科学特捜隊の歌
03. シーボーズのテーマ
04. 科特隊出撃
05. ウルトラマンの敗北
06. 進め!!ウルトラマン

交響詩「ウルトラセブン」(作曲、編曲:冬木透)
07. ウルトラセブンの歌
08. 怪獣出現
09. ウルトラホーク発進
10. 侵略者の魔手
11. さよならウルトラセブン
【演奏】小松一彦 指揮 東京交響楽団
【録音】1978年12月3日、福生市民会館におけるセッション録音

ARTIST

  • 小松一彦

    KAZUHIKO KOMATSU

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伊福部昭

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