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【白鳥英美子デビュー55周年記念】白鳥英美子×富澤一誠 スペシャル対談(後編)

構成:東端哲也/写真:Ryoma Shomura

2024.10.16

ポップ・デュオ“トワ・エ・モワ”でブレイクし、ソロ・シンガーとしても常に第一線で活躍を続けてきた白鳥英美子。今年デビュー55周年を迎えた彼女と音楽評論家・富澤一誠によるスペシャル対談の後半。(【前編】はこちらから)

富澤:1992年には、日本語を中心とした自作曲を中心としたアルバム『彩り』をリリース。そして1993年の『ARCADIAN』は初めてのセルフ・プロデュース・アルバムです。

白鳥:彩り』は未来に想いを馳せ、「これから生まれてくる子ども達の時代が素晴らしいものでありますように」と願いを込めて作った一枚です。この頃になると気持ちが凄く自由になって、割とオリジナル曲を沢山作るようになりましたね。
大好きなビートルズの曲はそれまでにも歌っていたのですが、アルバムには「Because」や「Hey Jude」のような未発表のナンバーも新たにレコーディングして収録しました。<注1>
アイリッシュサウンドの「Galwayの空」や「Cross my heart」のように、ケルト音楽の持つ雰囲気に誘われて、そういうアルバムもいいなと思って作り、それぞれの曲を表情豊かに仕上げました。<注2>
アイルランド民謡やスコットランド民謡、クラシカル・ナンバー、そして日本の名曲などをスコットランド、ニューヨーク、東京でレコーディング。英語でカヴァーした「HUSH NOW MY CHILD(中国地方の子守歌)」や「SUNSET(夕やけこやけ)」などにも挑戦しています。古くからの慣習や“こうでなきゃいけない”とかに囚われることなく、自由な発想で心のままに気持ちよく歌うことができました。<注3>

<注1>配信では1984年リリースの『白鳥英美子』と1985年リリースのビートルズ・カヴァー・アルバム『Dear…』をミックスしたラインナップでお届け。

<注2>2000年リリースの『CROSS MY HEART』は「ファイナルファンタジー」シリーズを通してのテーマ・ナンバー〈Message ~虹~〉などを収録したアルバム。

<注3>※2001年リリースの『BIG YELLOW MOON』は、松本零士・監修によるプレステ用コンピュータゲームからTVアニメ化した『コスモウォーリアー零』のエンディング・テーマ〈THE BOOK OF LIFE〉などを収録したアルバム。

富澤:“うた景色”シリーズ、とても素晴らしい内容ですね。<注4>

<注4>2012年~2015年には、美しい日本の故郷、自然、四季など色とりどりの“景色”を心に映し出す歌を集めたコンセプト・アルバム“うた景色”シリーズをリリース。このうち日本の名曲を集めた『うた景色~想い出の童謡・唱歌集~』(2013年)、外国の愛唱歌をメインにした『うた景色~エーデルワイス』(2014年)、フォーク&ニューミュージック編の『うた景色~翼をください』(2014年)と『うた景色~ひこうき雲』(2015年)の4タイトルを配信。

白鳥:キングレコードさんから提案をいただいた時、凄く嬉しかったのを憶えています。ずっと前から童謡・唱歌集のようなアルバムが作れたらいいなと思っていたので。当初、日本編2枚と外国編1枚の3枚の予定だったのですが、おかげさまでご好評をいただいて、特に学校関係の方が熱心に聴いて授業で活用して下さったりしたみたいですね。それで続編の話が持ち上がったので、古い童謡・唱歌もまだまだ尽きないけれど、どうせやるなら戦後になってから若者に支持された曲や現代の人気曲など、これからの世代にとって“古き良き”時代の唱歌になるような曲を選ぶのも楽しいのではと考えて、第4弾と第5弾ではフォークやニューミュージックの名曲も沢山カヴァーしました。

富澤:幼少期にはどんな童謡・唱歌がお好きでしたか?


【白鳥】歌が大好きな子どもで、いつでもどこでも好きなだけ歌っていましたが、いわゆる童謡歌手の声楽的というか一本調子な歌い方が苦手で「シャボン玉」とか「どこかで春が」とかを避けていましたね。子ども合唱団が直立不動で一糸乱れず揃って歌うのは微笑ましいと思えるのですが…私は“美空ひばり”さんのような個性的な歌唱が好きなので(笑)。“ひばり”さんは童謡を歌ってもきっと“ひばり”さんのままですよね…子どもの頃から変わらない、あの魅力的な歌い方で。

富澤:外国の愛唱歌はどうでしたか?

白鳥:「エーデルワイス」や「遠き山に日は落ちて」のような曲は小学校の先生が好んで歌わせたがったので、当時はみんなに合わせて合唱団風に歌っていました。今回は今の私だったらこう歌う、っていうスタイルをみつけて楽しんで歌っています。

富澤:子どもから大人まで幅広い年代にお薦めですね。
白鳥:「証誠寺の狸囃子~お猿のかごや~山寺の和尚さん~あわて床屋」のメドレーはアレンジも可愛らしく、特に乳幼児のお子さんにお薦めです。うちの孫も2歳くらいの頃、この曲ばっかり熱心にくり返し聴いてくれたので、つくづくこういう曲をレコーディングしておいて良かったなと思いました。

富澤:フォーク&ニューミュージック編のラインナップが豪華ですね。

白鳥:潤子さん(山本潤子)の「翼をください」も「卒業写真」も、良子さん(森山良子)の「この広い野原いっぱい」もみんなよく知っている友だちの代表曲だけになかなか人前で歌うことがないので、こういう機会に乗じて堂々と存分にカヴァーさせていただきました(笑)。

富澤:「君をのせて」はもちろんジュリー(沢田研二)のソロ・デビュー曲ではなくて…
白鳥:そうジブリ(天空の城ラピュタ)の方です(笑)。『うた景色~ひこうき雲』では娘のマイカ(白鳥マイカ)と一緒に「となりのトトロ」も歌いました。卒業シーズンの定番曲「想い出がいっぱい」や「BELIEVE」などもまさに今の子どもたちが大好きな“新唱歌”です。

富澤:泉谷しげるの「春夏秋冬」も白鳥さんが歌うと全然違いますね。
白鳥:名曲です。以前、泉谷さんが異国の地で歌っているのをテレビで観たことがあるんですが、言葉の壁を超えて現地の人の心に響いているみたいで、さすがだと思いました。

富澤:そしてこの度の配信アルバムにはキングレコード時代にリリースした“トワエモワ”作品2タイトルも含まれています。2011年リリースの『Bouquet de Fleur(ブーケ・ド・フルール)』はお二人にとって38年振り、7作目のオリジナル・アルバムでした。

白鳥:1998年の長野冬季五輪の際に、志賀高原で行われた記念イベントへの出演が契機となって本格的にデュオでの音楽活動を再開しました。私のソロ・コンサートにゲストで芥川さんを呼ぶようになって「じゃあ、ここからは“トワエモワ”になります~」みたいなノリでやっていたのですが、そろそろオリジナル曲中心のニュー・アルバムを作ろうかって話になって…。芥川さんが作詞を私が作曲を担当した「瀬戸内の詩」のような自作曲もありますが、「或る日突然」などで知られる山上路夫(作詞)&村井邦彦(作曲)の黄金コンビや伊勢正三さん(元かぐや姫)らによる書き下ろし曲など多彩な作曲家陣に参加していただきました。

富澤:「この街で」は(2021年に惜しまれつつ亡くなられた)新井満さんの曲ですね。
白鳥:富澤さんプロデュース「フォーエバーヤング~歌とトーク満載のフォークコンサート」の第4回に呼んでいただいた時に初めて新井満さんにお会いしたんです。満さんが歌っていた「この街で」をステージ袖から芥川さんと一緒に聴きながら「いい曲だよね」って言ってて、コンサート終わりの打ち上げの席でそのことを本人に伝えたら「じゃあ、ぜひ“トワエモワ”も歌ってよ。松山市には僕の方からも話しておくから…」って。松山市のイベントから生まれた曲で市民には愛唱歌として親しまれている大切な曲だったみたいで。その後、本当に松山市長から直々に事務所に電話があってラブコールをいただき、キングレコードから先ずシングル盤で発売することができました。

富澤:新井満さんって大いに個性的なキャラクターでしたが、裏表のない方でしたね。社交辞令とか言わないし。
白鳥:満さん主宰の北海道各地で開催される「イランカラプテ音楽祭」には今でも毎回参加していますが、もう会えなくて凄く寂しいです。

※2015年リリースの『TIME FOR US(タイム・フォー・アス)』はデビュー45周年記念アルバム。NHKラジオ「深夜便のうた」として話題を呼んだシングル曲「欅ストリート」とそのカップリング曲である“さだまさし”書き下ろしの「桜紅葉」、バンバンの「「いちご白書」をもう一度」や今井美樹の「PRIDE」など時代を超えた名曲とセルフ・カヴァーなどを収録した魅惑の1枚。

富澤:先ずは10月19日渋谷・さくらホールでの『55周年記念コンサートHalf Century Memories ~追憶~』が楽しみです。
白鳥:ソロ・シンガーとして活動中に出会った曲があまりに多く、それらのアルバムがあったからこそ今の私があると思うので、前半は敢えて“白鳥英美子”色を前面に押し出してクラシカルな曲をたっぷり聴いていただこうと思っています。もちろん後半には芥川さんをゲストに迎えて“トワエモワ”として元気いっぱい盛り上がって行きましょう! デビュー当時からのファンも、「アメイジング・グレイス」で知った方も、アニメの音楽から入った人も、みんなが楽しんでくれて「へぇこういう曲も歌ってたんだ」って魅力を再発見していただけるよう頑張ります。

富澤:配信によって世界中の人に聴いてもらえるようになりますね。
白鳥:今や海外からも注目されるジャパニーズ・ポップスですものね、凄い時代になりました。ご年配の方もこれを機会にぜひぜひ配信を聴いてください~便利ですよ。これからの白鳥英美子と“トワエモワ”にどうかご期待ください!


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ARTIST

  • 白鳥英美子

    EKIKO SHIRATORI

  • トワ・エ・モワ

    Toi et Moi

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