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【Disc Review】1960~70年代 国産イージーリスニング再発見~MOOD SOUNDS of TOKYO 第4弾 作品解説

 キングレコードの膨大なカタログの中から、1960~1970年代の知られざるイージーリスニング作品を紹介する『MOOD SOUNDS of TOKYO』。その第4弾は、前回に引き続き、グループ・サウンズ、ロック/ポップス、さらにはフォークのファンにもアピール出来うる作品をピックアップした。
 作曲家の宮川泰が自らの楽曲を自演する“宮川泰とオール・スターズ”、グループ・サウンズやエレキ・バンドの“井上宗孝とシャープ・ファイブ”、491(フォー・ナイン・エース)、ザ・ワイルダース、“津々美洋とオールスターズ・ワゴン”、ジャズ・ギターの巨匠・沢田駿吾、エレクトーン奏者の第一人者・斎藤英美、さらにはバロック・メイツとシンガーズ・スリーの共演盤など、14作品を配信。
 今回は、解説を1960~1970年代のイージーリスニング・レコードのジャケット・ライナーノーツを彷彿とさせる筆致での執筆を試みた。かつてジャケットに目を凝らしながらレコードに耳を傾けていた、あの古き良き時代への郷愁に浸りつつ、音の調べをお愉しみいただきたい。

文:ガモウユウイチ

2026.2.20

宮川泰とオール・スターズ/松本英彦/道志郎/松宮庄一郎(編曲:宮川泰)

ウナ・セラ・ディ東京~宮川泰作品集』(1964年発表)

耳を撫でるピアノの旋律に、過ぎ去りし日々の郷愁が宿る

——宮川泰が自ら手掛けた名曲たちを、贅を尽くしたインストゥルメンタルへと昇華させた“宮川泰とオール・スターズ” による珠玉の一枚です。

松本英彦(ts, ss, fl)、道志郎(org)、松宮庄一郎(gt)をゲストに迎え、そこに宮川泰自らが奏でるピアノが優雅に溶け合い、全編を通じて至高のアンサンブルが耳を撫でるように流れてゆきます。

カーメン・キャバレロを彷彿とさせる流麗なピアノのタッチに心奪われる「ウナ・セラ・ディ東京」、軽妙な4ビートが都会的な夜を演出する「ふりむかないで」、小粋なチャ・チャ・チャの躍動感が光る「青空の笑顔」、コンボ・ジャズ・スタイルへと装いを新たにした「恋のバカンス」など、変幻自在なリズム・アレンジの妙を堪能せずにはいられません。

ザ・ピーナッツのヒット曲を中心に、弘田三枝子、伊東ゆかり、園まりなどの楽曲も織り交ぜた構成。洗練を極めたその響きは、何気ない日常を映画のワンシーンへと塗り替えてゆく、芳醇な薫り高き至福の逸品です。


井上宗孝とシャープ・ファイブ

若いギター』(1966年発表)

三根信宏の弦が鳴り、井上宗孝の刻むビートが時代を加速させる

――“井上宗孝とシャープ・ファイブ”の通算5枚目アルバムの幕が開きます。
本作品は、三根信宏(gt)を中心に、前田旭(gt)、古屋紀(org)、秋山功(ba)、井上宗孝(ds)の布陣で制作されました。
1966年は、1月の『パラダイス・ア・ゴーゴー』から本作品に至るまで、年間5枚ものアルバムを世に問うたその驚異的な歩み。それは彼らが一身に浴びた熱狂的な支持の証左であり、同時に過密な録音をも軽妙に完遂する、類まれな演奏技術と音楽的強靭さを物語っています。

本作品を彩るは、紀本ヨシオ、佐々木新一布施明、加山雄三、梓みちよなどのヒット曲。聴き心地のよいサウンドが並ぶ中、激しいギター・プレイを聴ける「あの娘たずねて」、魂を揺さぶるドラム・ソロが冴えわたる「涙のギター」、洒脱なカントリー・スタイルで魅せる「若い明日」など、その端々にはエレキ・バンドとしての気高い矜持が宿っています。

若き情熱と洗練された技法が交差する、エレキ・インストの極致を心ゆくまでご堪能ください。


井上宗孝とシャープ・ファイブ

ついておいで”若いギター 第2集”』(1966年発表)

多忙の熱狂に魂を研ぎ澄ませ、エレキの粋を極める

――『若いギター』の僅か5ヶ月後にリリースされた井上宗孝とシャープ・ファイブによる同シリーズの2作目。
この間に、海外スパイ・ドラマやジャズ・ロックなどを取り上げた『ザ・サイドワインダー』も制作した彼ら。当時の彼らが抱えていた圧倒的な創造のエネルギーと、時代を駆け抜けるワーカホリックなまでの情熱を物語っています。

選曲には、彼らがバックを務めていたシャープ・ホークスほか、加山雄三、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、ザ・サベージ、ザ・ピーナッツなどのヒット曲が並びます。中でも、「お嫁においで」は軽妙なカントリー・スタイルへと鮮やかに塗り替えられ、躍動するドラム・ソロが火花を散らす逸品。また、彼ら自身の名曲「追憶」は、ヴォーカル入りのシングル・ヴァージョンがそのまま収められ、アルバムに深い余韻を添えています。ドラム・ブレイク入りの「青い瞳」は『ザ・サイドワインダー』に収録テイクの再収録です。

多忙を極める日々の中で研ぎ澄まされた、シャープ・ファイブの至芸が刻まれた一枚です。


井上宗孝とシャープ・ファイブ(編曲:古屋紀)

白い雲の彼方に”若いギター 第3集”』(1967年発表)

シャープ・ファイブが辿り着いた、気高きフィナーレへの調べ

――井上宗孝とシャープ・ファイブによるシリーズの掉尾を飾るに相応しい風格を纏って届けられた最終作。
ベースの秋山功が脱退して伊藤昌明が参加。秋山功は、新たにザ・リリーズを結成しました。ただし、シングル「遠い海」は秋山功の編曲によるもの。去りゆく名ベーシストが残したこのサウンドは、アルバムに情感豊かな彩りを添えています。

選曲には、バックを務めていたシャープ・ホークスほか、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、ザ・ワイルドワンズ、ザ・ピーナッツ、黛ジュンなどのヒット曲で構成。さらに、竜雷太の「あの娘と暮したい」という意外性のある構成も、彼らの懐の深さを物語っています。白眉は、古屋紀が編曲を担った「何処へ」でしょう。原曲をモッドなジャズ・ワルツへと変貌させたその筆致には、グループ随一の洗練された感性が光ります。

メンバー交代という転換期にありながら、さらなる高みへと昇華されたシャープ・ファイブの美学。そこにあるのは完成された静謐ではなく、軋みを上げながらも高みを目指す、どこか野生的で無骨なまでの美学です。シリーズの掉尾を飾る、熱狂が渦巻くフィナーレに、どうぞ心ゆくまで身を焦がしてください。


フォー・ナイン・エース(編曲:滝イサオ)

レッツ・ゴー・童謡』(1967年発表)

幼き時期の思い出の旋律が、エレキの閃光に貫かれる

——491(フォー・ナイン・エース)が残した異色にして華麗な一枚です。
1966年の結成当初に在籍したルイ高橋(vo)と田川譲二(vo)が、デビュー直前に脱退して寺内タケシとブルー・ジーンズに参加という波乱の幕開けを経て、後任に城アキラ(ジョー山中/vo)を迎えました。
本作品リリース時のメンバーは、滝イサオ(石井イワオ/gt)、沢健一(gt)、宮崎むつを(ba)、田村純(dr)、城アキラという布陣でしたが、童謡をエレキ・インストゥルメンタル化というコンセプトのため、城アキラのヴォーカルは未収録となっています。

当時の歌詞カードには「童謡で踊っちゃおう」のキャッチ・フレーズが記されています。「森の小人」、「赤いくつ」、「山寺のおしょうさん」などで、寺内タケシの弟子の滝イサオが、師匠譲りの精緻かつ情熱的なギターワークでエレキ・サウンドに鮮やかに塗り替えていく様は、まさにエレキの美学が結晶した瞬間といえるでしょう。

慣れ親しんだメロディが未知の輝きを放ち、エレキの美学が純白の結晶となって結実した至福の瞬間。若き表現者たちの情熱が、童謡という鏡を通して現代へと問いかける、芳醇なる名品を心ゆくまでお愉しみください。


沢田駿吾グループ/伊集加代子/シンガーズ・スリー(編曲:沢田駿吾/前田憲男)

ゴー・ゴー・スキャット~恋のフーガ~』(1968年発表)

巨匠の弦が爪弾く夜に、女王の吐息が溶け合う

——ジャズ・ギタリストの巨匠の沢田駿吾とスキャットの女王こと伊集加代子との至宝と呼ぶにふさわしいコラボレーション・アルバムです。
オリジナル盤に演奏者のクレジットは無いものの、同年の沢田レギュラー・クインテットの面々は、徳山陽(pf)、滝谷裕典(ba)、日野元彦(ds)、村岡建(sax、fl)だったので、彼らが参加している可能性も高く、その素晴らしいアンサンブルが土台となっています。

選曲は、ザ・スパイダース、ジャッキー吉川とブルー・コメッツ、美空ひばり、ザ・ピーナッツ伊東ゆかりなど。彼らのヒット曲を、沢田駿吾と前田憲男が洗練されたライト・ジャズやモッド・ジャズへと昇華させています。「マッシュ・ケ・ナダ」を彷彿とさせる「北国の二人」、「夢のカリフォルニア」の面影を宿す「白夜の出来事」など、聴き手の耳をくすぐる遊び心とセンスに満ちたアレンジが光ります。

当時の世相を映しつつも、時代を超えて愛される普遍的な魅力を放つ本作品。和ジャズの深淵を愛するすべての人に、この芳醇なる調べに、しばし酔いしれてみてはいかがでしょうか。なお、オリジナル・ジャケットの一部が修正されています。


木谷二郎とブルー・ソックス・オーケストラ(編曲:森岡賢一郎)

恋のしずく-ビッグ・バンド・トップ・ヒッツ-』(1968年発表)

黄金の旋律を纏う、名門ビッグ・バンドの矜持

——伊東ゆかり布施明ザ・ピーナッツ梓みちよ、木の実ナナなどキングレコードが誇る黄金期のスターたちのヒット曲を、“木谷二郎とブルー・ソックス・オーケストラ”が芳醇なインストゥルメンタルへと昇華させました。キングレコード所属の歌手に交じって、ザ・ワイルドワンズとザ・タイガースも選曲されている点に、時代を席巻したグループ・サウンズの烈しい息吹が今もなお息づいています。

“木谷二郎とブルー・ソックス・オーケストラ”は、後に“岡本章生とゲイスターズ”として『8時だョ!全員集合』を支えた岡本章生(tp)も籍を置いていたことのある渡辺プロダクションの名門ビッグ・バンド。重厚なブラス・アンサンブルによる「恋のフーガ」のみならず、ファズ・ギターが耳を引く「恋は宝」や「青空のある限り」などの意外性のある編曲も聴きどころです。

洗練されたビッグ・バンド・サウンドを通じて、日本の歌謡曲黄金時代の矜持を現代に伝える貴重な一枚と言えるでしょう。


津々美洋とオールスターズ・ワゴン(編曲:半間巖一)

レッツ・ゴー軍歌』(1968年発表)

受け継がれし旋律を、エレキの閃光で鮮やかに転生させる

——エレキ・バンドの名門である“津々美洋とオールスターズ・ワゴン”が軍歌という題材を鮮やかなエレキ・サウンドへと転生させた意欲作です。

そのルーツは、チャック・ワゴン・ボーイズとワゴン・マスターズのメンバーなどが集まり、1955年に結成されたオールスターズ・オブ・ワゴンが源流。結成時には、平尾昌晃(vo)や田辺昭知(ds)も名を連ねていました。57年に津々美洋(gt)が加入してからは、本格ロカビリー・バンドとして活躍を開始します。65年には“ジャッキー吉川とブルー・コメッツ”から江藤勲(ba)が、68年にはアウト・キャストから穂口雄右(org)が移籍。本作品リリース時のラインナップは、津々美洋、大塚紀男(gt)、穂口雄右、江藤勲、菊池清明(ds)という極めて強固な布陣でした。

ガレージ・ロックの衝動が炸裂する「麦と兵隊」や「軍艦行進曲」、洒脱なモッド・ジャズの香りを纏わせた「月月火水木金金」など、軍歌が持つイメージを大胆に解体しています。

洗練されたテクニックと時代の先端を行くモダンな感性によって、伝統的な旋律をエキサイティングなインストゥルメンタルへと昇華させた、職人集団としての真髄が光る一枚です。


鈴木敏夫とディジー・フィンガーズ/瀬上養之助と彼のラテン・リズムス

ゲストプレイヤー:鈴木章治、福原彰、松本英彦(編曲:鈴木敏夫)
ラブ・愛・ラブ』(1968年発表)

鍵盤と打楽器が織りなす、至福のダイアローグ

――伊東ゆかり布施明ザ・ピーナッツ、黛ジュン、寺内タケシとバニーズなどのヒット曲を、鈴木敏夫(pf)と瀬上養之助(per)が至高のインストゥルメンタルへと昇華させました。

鈴木敏夫はヴァイオリン奏者の鈴木三郎の長男で、長年“鈴木章治とリズム・エーセス(リズム・エース)”で活躍。次男はそのバンドマスターでクラリネット奏者の鈴木章治、三男はサキソフォン奏者の鈴木康一、四男はサキソフォン奏者で“鈴木正男 & SWING TIMES”の鈴木正男。瀬上養之助は、トリオ・ロス・パンチョスのコンサートでラテン・パーカッションを担当後、宮沢昭や菅野邦彦の作品に参加しています。

本作品のゲストには、鈴木章治(cl)、松本英彦(sax)、福原彰(tp)を迎え、そのサウンドは極めて贅沢な響きを湛えています。ボサノヴァ風に物憂げな情緒を湛えた「恋のオフェリア」、セルジオ・メンデス&ブラジル’66を彷彿とさせる「恋のフーガ」や「恋のハレルヤ」など、ラテンやブラジル音楽の意匠を巧みに織り交ぜた編曲が秀逸です。

時代を超えて愛されるメロディを、洗練された大人のラウンジ・ミュージックへと仕立て上げた、熟練の美意識が息づく作品です。


ザ・ワイルダース(編曲:永作幸男)

ビート・イン・ディスコ』(1968年発表)

端正な理知と、灼熱のファズが交差する

——グループ・サウンズのアイドルスが別名義のザ・ワイルダースでリリースした作品です。
その系譜は、ザ・スペイスメンから独立したヴォーカル隊が結成した1964年のザ・ジャイアンツにまで遡り、翌65年にはザ・スパイダースに次ぐ先駆者としてビクターよりデビューを飾りました。66年にアイドルスと改名した彼らは、メンバー全員が楽譜を読みこなす卓越した音楽素養を備えていたため、劇伴音楽の世界でも重宝されました。
そうした職人的な背景からキングレコードにて制作されたのが、ワイルダース名義による二枚のインストゥルメンタル・アルバムでした。本作品は、その1枚目となります。

録音時のラインナップは、中村ヒデミ(中村秀雄/gt)、田中ミツオ(田中光男/gt)、江見ヨシオ(org)、浅賀トモミ(ba)、丘マサミ(ds)という布陣。レコードのA面には、ザ・テンプターズやザ・ワイルドワンズなどグループ・サウンズを中心に、B面には、ザ・ビートルズやザ・モンキーズなどの洋楽を中心にした構成となっています。

全編を通じてファズ・ギターが鳴り響きながらも、野放図なガレージ感に終始することなく、端正なアンサンブルによって気品ある響きにまとめ上げられています。激情と理知が同居するそのサウンドは、まさにシーンを初期から支えてきた実力派の風格を感じさせます。


宮沢昭/ポップ・アンド・ポップス(編曲:萩原秀樹)

ゴーゴー・サックス Vol.3“星を見ないで”』(1968年発表)

 ジャズの深淵を見つめてきた名手が、軽やかなシェイクのリズムに心を遊ばせる

――萩原秀樹が編曲を手がけた『ゴーゴー・サックス』シリーズ第3弾。本作品で主役を務めるのは、国内サキソフォン奏者の第一人者である宮沢昭です。名盤『山女魚』で聴かせた求道的な姿勢とは対照的に、ここでは萩原秀樹の軽妙なアレンジに身を任せ、気負いのない、たおやかなブロウを披露しています。

萩原秀樹は、グループ・サウンズのザ・ハーフ・ブリードを手掛けたことで知られますが、ジャズ・ピアニストや作曲・編曲家として活動していました。本作品では、R&Bスタイルのシェイクのリズムに乗せ、あえて深追いしない洒脱なサウンドを生み出しています。

グループ・サウンズのブーム真っ只中にリリースされたこともあり、ヴィレッジ・シンガーズ、ザ・ワイルドワンズ、ザ・テンプターズ、ザ・タイガース、ザ・ゴールデン・カップスなどといった人気グループの楽曲で構成しています。とりわけ「小さなスナック」で見せるファズ・ギターとの邂逅は、その淡々とした温度感のメロディゆえに、かえって異色さを際立たせています。

熱狂の時代にあって、あえてクールに、そして優雅に。熟達した音楽家たちが、あえて「力を抜く」ことで辿り着いた至福のリラックス。その芳醇な響きが、日常を上質なラウンジへと変えてゆくことでしょう。


斎藤英美/リズムス・レオン/シンガーズ・スリー(編曲:一ノ瀬義孝)

みんな夢の中-ビート・ア・エレクトーン-』(1969年発表)

電子オルガンの調べが産声を上げ、鍵盤の魔術師が新たな地平を拓く

——日本の音楽史において、1950年代末から60年代にかけては、電子楽器という新たな光が産声を上げた輝かしい季節でした。
58年に国産初の電子オルガンが日本ビクター(ビクトロン)から発売され、その後、テスコ(スーパーエレガン)、東洋電子楽器(クロダトーン)、日本楽器(ヤマハ/エレクトーン)、河合楽器(ドリマトーン)、エース電子工業(エーストーン)、松下電器(テクニトーン)、ブラザー工業(エミリオン)が続々と参入。
特にレコード制作で存在感を示したのがビクトロン、エレクトーン、ドリマトーンの3ブランドでした。

かつてハモンド・オルガン奏者として高名を馳せた斎藤英美(齋藤英美)が、時代とともにエレクトーン奏者の先駆者として新たな地平を切り拓いたことは、まさに必然であったと言えるでしょう。本作品で彼が指を這わせるのは、68年に誕生したエレクトーンE-3。当時の楽器が持つ慎ましやかな音色を補うべく、精鋭スタジオ・プレイヤーによるリズムス・レオンの躍動感あふれるビートと、シンガーズ・スリーによる天上のスキャット(ヴォカリーズ)が華麗に添えられています。

高田恭子、ザ・フォーク・クルセイダーズ、いしだあゆみ、ザ・キング・トーンズ、じゅん&ネネなどの時代を彩った名曲たちが、斎藤英美の手によって洗練を極めたラウンジ・ミュージックへと昇華されました。エレクトーンのぬくもりと、卓越したアンサンブルが織りなす至福のひととき。それは、都会的な知性と安らぎが同居する、まさに大人のためのエレガントな音楽体験です。


バロック・メイツ/シンガーズ・スリー(編曲:小川寛興)

フォークの世界』(1969年発表)

フォークの素朴な調べに、バロックの気高き光を翳して

——グループ・サウンズの熱狂が穏やかに翳りを見せ始めた1969年。
日本の音楽シーンでは、フォークのヒットが立て続きました。そんな中でリリースされたのが本作品で、トワ・エ・モワ、カルメン・マキ、ビリー・バンバン、はしだのりひことシューベルツ、マイケルズなどのヒット曲を小川寛興が鮮やかに彩っています。

小川寛興は、『月光仮面』や『仮面の忍者 赤影』などドラマの音楽から、倍賞千恵子「さよならはダンスの後に」や中村晃子「虹色の湖」などの歌謡曲の作曲も手掛けていた、キングレコードが誇る至宝。本作品においても、チェンバロを大胆に取り入れたバロック風の気品あふれるアレンジが、シンガーズ・スリーによる柔らかなスキャット(ヴォカリーズ)と溶け合い、唯一無二のエレガンスを醸し出しています。

演奏を担うバロック・メイツの実体は明かされていませんが、端々に聴こえる江藤勲と思われるベーストーンから、当時の最高峰を極めたスタジオ・ミュージシャンたちの手による真摯な共演であることは疑いようもありません。フォークの素朴さと、バロック音楽の様式美。その幸福な邂逅がもたらす豊かな調べに、ぜひ静かに耳を傾けてみてください。


バロック・メイツ/シンガーズ・スリー(編曲:小川寛興)

バロック・ロックの世界』 1970年発表

至高のヴォカリーズが、フォークの叙情を永遠の夢へと塗り替える

――バロック・メイツが贈るシリーズ第2弾。その扉を開くと、そこには「バロック・ロック」の優美なる世界が広がっています。

ここで、声の芸術にまつわる繊細な違いを紐解いておきましょう。あらかじめ紡がれた旋律を歌詞を持たず母音のみで歌い上げる「ヴォカリーズ」。既存の器楽曲に言葉を乗せて息吹を吹き込む「ヴォーカリーズ」。そして、その場の刹那に旋律を生み出す即興の「スキャット」。本来、旋律が定められたものは「ヴォカリーズ」と呼ぶのが正しき用法でありますが、我が国では「夜明けのスキャット」の大ヒット以来、書き込まれた旋律であっても「スキャット」と呼ぶ慣習が一つの文化として定着しました。

本作品に横溢するのは、まさにその豊潤な響き。ベッツィ&クリス、はしだのりひことシューベルツ、ビリーバンバン、森山良子といった時代を彩るフォークの名曲たちが、小川寛興の手による気品あふれる編曲によって、クラシカルな静謐さとフォークの叙情が溶け合う、洗練を極めたイージーリスニングの傑作へと昇華されました。小川寛興の至芸によって魔法をかけられた名曲たちは、今、永遠の輝きを放つバロックの夢として、聴く者の魂を優雅に揺さぶり続けます。

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